今日、医薬品企業の直面している課題のうち、最も急務とされている中には製品開発速度の向上と開発コスト削減が挙げられます。これは、単なる企業収益向上の視点のみならず、社会保険、医療費の削減や、より安全でかつ安価な医薬品の安定供給の要望と言った社会的な要求も影響しています。
従来の固形製剤/経口製剤の開発プロジェクトにおいては症例に有効な化合物選定から、合成、治験、製剤開発、工業化、承認プロセスなど、複数の段階(フェーズ)を経ることで製品化されます。このうち、製剤開発に着目すると、適切な原薬(API)の選択を効率的に行うことで、これまで以上に迅速な医薬品上市への貢献することが可能と考えられます。また、医薬品成分の中でAPIは最も重要で高額な成分です。このためには、APIの安定供給先の確保のため、サプライヤの複数化が考えられます。このため、サプライヤ間製品の詳細な理解、および適切な選択を行うことは重要です。これは同時に医薬品のコスト削減、製造効率化への貢献が期待できます。
さらには人命に直接かかわる製品という性質上、管理当局の規制へ対応や、安全性の確認なども、同時に必須要件となります。これは、他の工業材料とまた異なる視点でのリスク管理も重要であることを示しています
このように、医薬品には、科学的妥当をもち、早期かつ包括的でかつ安全性を担保可能な評価系の構築は絶対的に必要となります。この要望は、「サイエンスベースアプローチ」という言葉でも表現されています。
種々あるAPIに対する評価の中でも、詳細に物理化学特性の評価(物性評価)は製剤化に対し、以下のような多くの利点をもたらします。
- 製剤化可能な医薬品の有効化合物を効率的に選定する
- 有効だが製剤化困難であったAPIの物性を改善することで製剤化を可能とする
- 科学的な裏付けのある安定的な製造条件を最適化する
- 製剤開発の初期段階における医薬品開発に伴うリスクの管理と緩和
- 長期的な視点での戦略的なプロジェクト管理(速やかな撤退も含む)
- 実用化の可能性があるAPI候補の選択
- 重要材料特性(CMA)および重要品質特性(CQA)の理解を支援する科学データ
- APIや製剤製造における現実的なスケールアップの支援
- クオリティバイデザイン(QbD)に用いる基礎データの取得
- プロセス解析技術(Process Analytical Technology:PAT)への適用技術
APIバイオアベイラビリティ
今日、新規に開発されたAPIのほとんどは不溶性と言われています。したがって、分子が効率的に体内で適切に吸収され、高い薬理効果を発揮(高いバイオアベラビリティを持つ)することが困難となることが考えられます。
特にDevelopability Classification System (DCS) や Manufacturing Classification System (MCS)などのアプローチは、バイオアベイラビリティ要件を満たす可能性がある候補分子を特定するのに役立ちます。また、スケールアップと安定的な製造条件の最適化にも同時に貢献できるでしょう。これらのシステムは、適切な物性分析に基づいて必要なデータを提供します。このアプローチにおいて最適化されたリード化合物、APIの塩類化合物、結晶多形を製品とプロセスの両方の要件を満たすために必要な重要材料特性(CMA)に関連づけることが可能です。
一般的に、難溶性APIの溶解性改善には、粒子径の小粒子化、粒子形態(形状)の制御、適切な結晶多形の選択、さらには分子の非晶質(アモルファス)化が挙げられます。
この要望にマルバーン・パナリティカルのシステムは、次のようにお答えします。
- どのような粒子形状のAPIを使用できますか?
- 結晶多形体は複数ありますか?
- 小粒子化は、粒子と多形体の安定性にどのように影響しますか?
- 非結晶物の含有量はどの程度ですか?
- 非結晶構造をどのように定義して特性評価できますか?
バイオアベイラビリティ戦略をサポートする分析ツール
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マスターサイザー製品
APIの安定性
各種製剤に用いるAPIの安定性を理解することは特に重要です。特にリード分子の最適化、塩のスクリーニング、およびプロセス開発に不可欠なためです。
特に多形が変化することで、溶解速度の変化、薬効の低下、重篤な副作用などが生じる可能性があります。また、近年の多くのAPIは薬効と同時に結晶形も特許に含む場合が多いため特許論争が発生するリスクも考えらえます。
したがって、適切な多形体の選択、経時的な多形体の安定性の確認が重要です。 また、溶解性を改善するためにAPIの非結晶型を選択するとき、これがさらに重要になります。不溶性をもつ結晶形態への予期せぬ結晶化は致命的になる可能性があるからです。
すべての多形相を把握し、その挙動が適切理解されていることを確認することで、APIの安定性を管理することで開発から製造まで、多形体に関するリスクを低減することができます。
マルバーン・パナリティカルのシステムは、次のような疑問にお答えします。
- APIにどのような多形相が存在しますか?
- これらの多形相はどのように作用しますか?
安定性試験を可能にする解析ツール
X線回折装置(XRD)Empyreanシリーズ
Crystallinity determination - Quantification of low amounts of amorphous material in a crystalline matrix and vice versa
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APIの製造と処理
Monitoring the impact of processing on the size and shape of API particles
多くのAPIは、安定性や加工性に関連する問題により、工業化、スケールアップ時の課題を抱えています。 加工効率の最適化する工程開発と、そこで決定された工程を継続的に利用可能な新しい製造方法へのシームレスな移行も重要な要件となります。したがって、APIの製造加工を、科学的アプローチにより、より理解しすることで製造エラーの少ないスケールアップを実現するための要件に、迅速かつ容易に適合させられるようにすることがますます重要になっています。
マルバーン・パナリティカルの分析システムは、QbDアプローチによるAPI開発を可能にする知見を提供し、ロバスト設計による効率的な管理領域の定義、プロセスの最適化、およびその領域内でのプロセスパフォーマンスの維持を支援します。
マルバーン・パナリティカルのシステムは、次のような疑問にお答えします。
- 処理中のAPIの安定性はどのようなものですか?
- バイオアベイラビリティに関連する重要材料特性(CMA)を制御するにはどうすればよいですか?
- 元素不純物に関する製品または成分の安全特性は何ですか?
加工性を向上させ、スケールアップを支援する分析アプローチ
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インシテックシリーズ
Epsilon 4
API品質
開発から製造へ、「工業化」と呼ばれる技術移管は常に課題を抱えています。特に医薬品会社の原薬プロセス研究と製剤開発研究、それに品質評価研究を担当するChemistry, Manufacturing and Control(CMC)部門においては重要で、API製品の品質と安全性を維持するために、CMAを常に監視する必要があります。 ミクロ構造および粉体中粒子の形態観察は、ICHガイダンス(ICH Q3D、ICH Q6A、ICH Q1A)において推奨された重要な特性評価です。
マルバーン・パナリティカルのシステムは、次のような要件にお答えします。
- APIや賦形剤の原材料や中間体の品質管理、バッチリリースの安定性試験
- エラーバッチのトラブルシューティング
- プロセス最適化を支援する物理的・化学的な知見
- 施設間または従来工程から、新規処理方法へのプロセスの移行
- 従来と新規製品の同等性を支援するIn vitro生物学的同等性評価