医薬品添加剤の特性評価

はじめに

製剤開発の目的は、意図したとおりの目標製品品質プロファイル(QTPP)を一貫性を維持しながら実現するために製品とその製造プロセスを設計することです。 これには、製品のパフォーマンスを定義する原薬(API)と添加剤の重要品質特性(CQA)を判別する必要もあります。 CQAは通常、特定の属性(粒子径など)のばらつきが薬品の品質とパフォーマンスにどの程度影響するかを評価することで識別されます。

添加剤について、FDAとUSPのガイダンスでは、添加剤のCQA識別と関連品質管理の設定を推奨しています[1]。 添加剤の物理特性の変化は、他の製剤成分との相互作用に影響するため、QTPPに大きな影響を与える可能性があります。

解析戦略

顕微鏡画像を使用した製剤混合物の解析は、添加剤の物理特性が製品のパフォーマンスにどのように相関するかを把握するために、製品開発の初期段階で広く使用されています。

添加剤に関連するCQAが識別されると、レーザ回折式粒度分布測定を使用して、日常的な品質管理戦略が策定され、検証されます。

このアプリケーションノートでは、状況に応じて使用可能なガイダンスを考慮するために、ラクトースをサンプル添加剤として使用します。 ラクトースは、さまざまなグレードのものが一般に販売されています。 適切な粒度分布(PSD)を入手するために特定のグレードを選択、または複数の異なるグレードを混合する操作は、特定の製剤の機能、および処理過程と最終製品でAPIとどのように相互作用するかによって導かれます。 [2]

このアプリケーションノートでの最初の事例では、形態学的に指示したラマン分光(MDRS)法を使用し、ラクトースとAPIの混合に対して成分固有の形態学解析を実現する方法を示します。 2番目の事例は、レーザ回折バルク材料特性評価ツールを使用する方法を示します。このツールは、製剤開発からQC解析まで添加剤の粒子径測定の要件をサポートできます。

▼事例(1. 製剤における添加剤機能について 2. 添加剤混合の監視)、結論をご覧になるには、ページ下部より会員登録の上、ログインしてください。

はじめに

製剤開発の目的は、意図したとおりの目標製品品質プロファイル(QTPP)を一貫性を維持しながら実現するために製品とその製造プロセスを設計することです。 これには、製品のパフォーマンスを定義する原薬(API)と添加剤の重要品質特性(CQA)を判別する必要もあります。 CQAは通常、特定の属性(粒子径など)のばらつきが薬品の品質とパフォーマンスにどの程度影響するかを評価することで識別されます。

添加剤について、FDAとUSPのガイダンスでは、添加剤のCQA識別と関連品質管理の設定を推奨しています[1]。 添加剤の物理特性の変化は、他の製剤成分との相互作用に影響するため、QTPPに大きな影響を与える可能性があります。

解析戦略

顕微鏡画像を使用した製剤混合物の解析は、添加剤の物理特性が製品のパフォーマンスにどのように相関するかを把握するために、製品開発の初期段階で広く使用されています。

添加剤に関連するCQAが識別されると、レーザ回折式粒度分布測定を使用して、日常的な品質管理戦略が策定され、検証されます。

このアプリケーションノートでは、状況に応じて使用可能なガイダンスを考慮するために、ラクトースをサンプル添加剤として使用します。 ラクトースは、さまざまなグレードのものが一般に販売されています。 適切な粒度分布(PSD)を入手するために特定のグレードを選択、または複数の異なるグレードを混合する操作は、特定の製剤の機能、および処理過程と最終製品でAPIとどのように相互作用するかによって導かれます。 [2]

このアプリケーションノートでの最初の事例では、形態学的に指示したラマン分光(MDRS)法を使用し、ラクトースとAPIの混合に対して成分固有の形態学解析を実現する方法を示します。 2番目の事例は、レーザ回折バルク材料特性評価ツールを使用する方法を示します。このツールは、製剤開発からQC解析まで添加剤の粒子径測定の要件をサポートできます。

事例:製剤における添加剤機能について

添加剤のCQAを確立するために、添加剤の粒子が製剤の他の成分と相互作用する方法について理解することが重要です。

ラクトースは、医薬品の増量剤として広く使われています。 場合によっては、微細なラクトース粒子は、製剤内のAPI粒子と結合し、弱い多成分凝集(MCA)を形成します。 MCAの存在は、最終的な製品のバイオアベイラビリティに悪影響を及ぼす可能性があります。 あるいは、このタイプの凝集では、処理過程においてAPI粒子同士の強結合凝集が阻害されることがあるため、最終的な製品の含量均一性とバイオアベイラビリティが改善することもあります[2]。 したがって、最適なラクトースPSDを選択することは、APIとの相互作用を制御し、最終的に製品のQTPPを実現する上で重要です。

添加剤とAPIの相互作用を理解する1つの方法が、形態学的に指示したラマン分光(MDRS)法を使用することです。 MDRSは、自動画像解析とラマン分光法の化学的同定機能を組み合わせた、比較的新しい手法です。 MDRSシステム(モフォロギ-ID)を使用すると、製剤混合物の成分を識別し、個々の形態学的特性を個別に判定できます。

この例では、MDRSを使用してラクトースとAPIの混合物を予備解析した結果、APIとラクトースのMCAの存在が明らかになりました。 図1は、凝集のスペクトルと純ラクトースのスペクトルと純APIのスペクトルを重ねたものです。この図から、凝集のスペクトルには、2つの純物質によく似た特徴があることが分かるため、これはMCAであると確認できます。

図1:MDRS(モフォロギ-ID)システムを使用して記録した粒子のラマンスペクトル(黒)。 このスペクトルには、ラクトースとAPI粒子によく似た特徴があるため、この2つの粒子が凝集してMCAを形成していることが分かります。
MRK2093_fig01

この2つの粒子タイプの凝集を変更または制御するには、この相互作用の性質をまず理解する必要があります。 この場合、ラマン分光法の対象となるすべての粒子は、純粒子の各スペクトルとMCAスペクトルの相関スコアに従って化学的に分級されています。 その上で、MDRSシステムが成分固有の粒度分布を生成しています(図2参照)。

図2:数に基づくAPI粒子(赤)、ラクトース(緑)、MCA(青)の粒度分布の重なり
MRK2093_fig02

このデータから、ラクトースの粒子径はAPI粒子よりもかなり大きく、MCAの粒子径はAPIのみの粒子よりもやや小さいことが分かります。 これは、微細なAPI粒子が微細なラクトース粒子と相互作用し、MCAを形成していることを示唆しています。

混合段階(図3)における製品パフォーマンスと3種類の粒子タイプの割合の関連性をさらに調べると、混合物のバイオアベイラビリティ、API安定性、加工性を最大限に発揮する組み合わせを明らかにすることができます。

図3:MDRS(モフォロギ-ID)システムを使用して混合物で解析した粒子の各クラスの相対組成
MRK2093_fig03

事例:添加剤混合の監視

MDRSを使用すると、製剤科学者は添加剤の最適な粒度分布を識別できます。 ただし、添加剤の粒子径と製品のパフォーマンスの関連性は、添加剤の粒子径が制御されている場合にのみ確立されます。

添加剤の特性評価に使用できる手法の1つにレーザ回折法があります。 その幅広い測定範囲とサブミクロン単位のパフォーマンスにより、多数の異なる添加剤のグレードと混合物を特性評価できます。 比較的大きなサイズの試料は、レーザ回折法で特性評価できます。そこで得られた結果は再現可能であり、バルク材料の特性を表します。 迅速な測定と簡単な設定が可能なため、日常的な品質管理(QC)や研究開発(R&D)に最適な方法です。

この事例では、市販されている2つのグレードのラクトースから何種類かの混合物を作成しました(表1)。 レーザ回折機能(マスターサイザー3000)を使用して、それを個別に解析しました。

表1:粒子径10µm~100µmのラクトースの混合物の割合
混合物番号LH300(Dv50 10 mm)LH100(Dv50 100 mm)
11%99%
25%95%
310%90%
420%80%
530%70%
650%50%

図4のアンダーサイズ分布図では、表1のすべての混合物にわたって粒度分布のばらつきを正確に判定する上で、レーザ回折の感度が明らかになっています。 システムは、混合物の変化に応じた微粒子含量の増加を正確に検出しています。 これは、製剤開発における補助添加剤の選択にレーザ回折を現実的に適用できることを示唆しています。

図4:表1に示されたラクトース混合物のアンダーサイズ粒度分布データ。
MRK2093_fig04

最適なラクトースPSDが確立されると、有効性が確認された方法で毎日の製造時に品質管理をサポートする必要があります。 物理特性手法の有効性に関するUSPのガイダンスによれば、手法の応答の線形性を測定する必要があります[3]。 この場合、粒度分布測定システムの応答性は、混合物内の細粒分の変化に対して線形になる必要があります。

図5のトレンドプロットでは、上記のラクトースの例を考慮し、解析した混合物内の微細ラクトースの成分に対して、粒子径30µm未満の粒子の体積比率がどのように変化するかを示します。 線形回帰係数は、レーザ回折システムが混合物の組成の変化に正しく応答していることを示唆しています。

図5:混合物内の微細ラクトース(LH300)の比率に応じて粒子径30µm未満の粒子の体積比率がどのように変化するかを示すプロット。
MRK2093_fig05

このデータは、研究開発のサポートにおいてだけでなく、製剤において今後も必要とされる日常的な品質管理業務においても、レーザ回折が効果的なツールであることを示しています。

結論

製剤開発では、製品のパフォーマンスを規定するAPIと添加剤に対して、粒度分布などのCQAを識別する必要があります。 このアプリケーションノートでは、開発におけるこの重要な段階で、レーザ回折法に加え、MDRSを使用した場合について検討しています。

MDRSを使用すると、製剤配合用に成分固有の粒度分布を測定できるだけでなく、製剤科学者が添加剤とAPIの相互作用の性質を認識できるようになります。 生成されたデータを使用すると、添加剤のPSDがこの相互作用に及ぼすばらつきの影響を把握できます。

添加剤の粒度分布を制御するために、レーザ回折などの正確で再現可能なバルク材料の特性評価ツールが必要となります。 レーザ回折法は、その幅広い測定範囲、迅速な結果、設定の簡便さにより、製剤開発段階から製造段階における毎日の品質管理まで、製品開発プロセスをサポートします。

参考文献

  1. USP Guideline for Submitting Requests for Revision to USP-NF V3.1 April 2007
  2. Matthew D. Jones and Robert Price, “The Influence of Fine Excipient Particles on the Performance of Carrier-Based Dry Powder Inhalation Formulations”, Pharmaceutical Research, Vol. 23, No8, August 2006
  3. USP <1225> Validation of Compendial Procedures / General Information

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