製品開発の初期段階におけるレーザ回折式粒子径分布測定装置の活用例

粒子径および粒度分布は製品の性能を決める重要なパラメーターであることが多い。 そのため、粒度分布を製品開発の初期段階で測定することは、非常に有益である。 本稿では小容量測定ユニットHydro SVが、このような場面で、どのように活用できるかを説明する。

はじめに

粒子径および粒度分布は製品の性能を決める重要なパラメーターであることが多い。 粒子径測定は製品の安定性、均一性、流動性、外観などの性質を予測し、制御するためのツールとして活用でき、また、新しい試料の処理性を理解する際の手助けにもなる。 したがって、粒子径を製品開発の初期段階で測定することは、研究開発者にとって非常に有益である。

製品開発の初期段階で粒度分布測定を実施する場合、測定に使用できる試料の量が限られていることが多い。 それゆえ少量のサンプルでも測定できる装置が必要になる。 それと同時に、後の製品開発および生産の段階では、より多くの試料を測定できるようにすることも重要である。 このとき、開発初期に少量で測定した粒子径測定値の規格を、スケールアップ時に、引き継ぐことが出来るかが重要である。

本アプリケーションノートでは、このような製品の研究開発から量産に至るまでのサイクル全体にわたって、マスターサイザー3000レーザ回折式粒度分布測定装置を粒子特性評価ツールとして使用することを検討する。 マスターサイザー3000の小容量分散ユニットHydro SVは、製品開発の初期段階における少量測定を可能にすることを目的としている。一方、これよりも容量が大きいHydro MV、Hydro EV、Hydro LV分散ユニットは、開発後期および量産時に、より多量の試料を測定することを目的としている。 2種類の試料での応用例を紹介する。1つは粗い粒子径の製品、もう1つは微細な粒子径の製品で、粗い粒子径のサンプルは、サンプリングにおける課題、微細なサンプルでは分散における測定上の課題を検討する。 Hydro SVの小容量測定に基づいて作成した粒子径の仕様が、より大きな容量の分散ユニットに移行できることを示す。

ケーススタディ1:粗い試料の測定

粒子径測定値の規格を小容量測定時から大容量測定時に移行する場合、測定する試料の調整方法が重要になる。 特に、サンプルが粒子径が70~100μmを超える粒子を含む場合に、測定のバラツキが大きくなることが多い[1]。 適切なサンプリング手順が決定したら、次に代表的な粒度分布を測定できるように、レーザ回折測定システムの測定条件を決定しなければならない。 このためには測定中に試料が均一に循環するように制御することが求められる。

図1に、Hydro SV(6mlの分散媒容量)およびHydro MV(120mlの分散媒容量)を使用して得られた粗い試料の粒度分布を示す。 この試料の粒度分布は幅広く(粒子径の分布幅は1桁以上ある)、大きな粒子を含んでいるため、小容量と大容量とで同様の結果を得られるようにサンプリングを制御しなくてはならない。


図1:小容量分散ユニットHydro SVおよび、標準容量分散ユニットHydro MVを使用して作成した、粗い試料の粒度分布の重ね合わせ
MRK2114_fig01


図1に示すように、各分散ユニットで測定された測定結果は同様であり、直接比較することができる。 各分散ユニットを使用して得られたメジアン径(Dv50)、90パーセント径(Dv90)、分布幅(スパン)を示す表1に示す。 これらのパラメーターはほぼ一致しており、小容量で得られた結果の精度の信頼性を示している。

表1:図1で示した粒度分布に関するDv(50)、Dv(90)およびスパンの比較
分散ユニット平均Dv(50)/μm平均Dv(90)/μm平均スパン
Hydro SV77.81471.6
Hydro MV79.81461.5


このデータは、この製品の研究開発の初期段階で、小容量分散ユニットを用いて確立された仕様が、後の開発または生産工程における大容量測定に効率的に移行できることを示している。 これにより、スケールアッププロセスにおいて、必要になることがあるトラブルシューティングの手助けにもなる。

ケーススタディ2:微粒子の測定

粒子径測定に関しては、サンプルの分散状態を一定にするという、もう一つの課題がある[2]。 分散状態の違いは、コロイド状粒子(粒子径20μm未満の粒子)を含む試料を測定する場合に、測定のバラツキの最も大きな原因となっていることが多い。 Hydro SVの場合、ユニットに超音波プローブが搭載されていないため、試料をユニットに挿入する前に、試料の分散状態を制御しておかなければならない。 これに対してHydro MVは、内蔵超音波プローブにより、自動測定シーケンス中に試料の超音波処理が可能なため、高度な分散制御が可能となっている。 したがって、スケールアップ時にユニット間で測定方法を移行する場合、分散プロセスを理解し、制御することが求められる。

図2は、微粒化した試料に対してHydro SVおよびHydro MVを使用して測定した粒度分布を示している。 この試料の粒度分布では全体の粒子径が20μm未満であるため、同様の結果を得るには分散状態を制御する必要がある。 Hydro SVの場合、試料を分散ユニットに追加する前に外部の超音波処理槽を使って試料を分散しているのに対し、Hydro MVでは内蔵の超音波処理を使用している。


図2:小容量分散ユニットHydro SVおよび標準容量分散ユニットHydro MVを使用して、微粒化した試料を測定したときの粒度分布の重ね合わせ
MRK2114_fig02


図2に示すように、各分散ユニットで測定された測定結果は同等である。 Dv50、Dv90およびスパンも同等であり(表2)、両方の測定において分散プロセスが制御できていることを示している。 ケーススタディ1と同様に、これによって、Hydro SVを使用して得たデータがサンプルを代表するものであり、このデータから導き出した規格は、スケールアッププロセスの制御の根拠として使用できるという信頼性が得られる。

表2:図2で示した粒度分布に関するDv(50)、Dv(90)およびスパンの比較
(API)アクセサリ平均Dv(50) (μm)平均Dv(90) (μm)平均スパン
Hydro SV1.683.331.5
Hydro MV1.583.121.5


結論

粒子径および粒度分布は製品の性能を決める重要なパラメーターであることが多い。 そのため、粒度分布を製品開発の初期段階で測定することは、非常に有益である。 本稿で示したデータでは、マスターサイザー3000 Hydro SVおよびHydro MV分散ユニットを使用して、異なる試料量に対して同等の測定結果を生成できることが確認された。 小容量と大容量の試料とで一貫した測定結果を生成できるため、製品開発の初期段階、さらにスケールアップ、または製造段階の支援のためにレーザ回折法を使用することができる。

参考文献

[1] WP051214 – 粒子径解析のためのサンプリング このドキュメントはマルバーンのウェブサイトから入手できます。

[2] TN130222 - レーザ回折式粒度分布測定のための湿式分散または液体分散手法の開発 このドキュメントはマルバーンのウェブサイトから入手できます。

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