示差走査型カロリメトリー(DSC)

信頼のあるタンパク質安定性評価

示差走査型カロリメトリー(DSC)はタンパク質やその他の生体分子の安定性評価を天然状態でダイレクトに測定する分析手法です。DSCはシステムを一定間隔で温度を上昇させることによって生じる分子の熱変性に関連した熱変化を測定します。

測定原理

溶液中の生体分子は、天然(folded)状態と変性(unfloded)状態の間で平衡状態にあります。変性中点温度(Tm)が高いほど、その分子は安定であると言えます。DSCは熱変性がもたらすアンフォールディングのエンタルピー変化(∆H)を測定します。また、熱変性がおこす際の熱容量変化(ΔCp)も測定することができます。DSCを用いることで、天然状態にある生体分子のフォールディングと安定性に寄与する要素を明らかにすることができます。その要素には疎水性相互作用、水素結合、構造エントロピー、物理的環境などがあります。

DSCで得られる正確かつクォリティの高いデータは、プロセス開発および治療候補薬の製剤におけるタンパク質安定性に関する重要な情報を提供します。

高分子およびタンパク質、核酸、脂質のような高分子集合体(> 5000ダルトン)は、熱によって誘導されたコンフォメーション変化として、明確に定義された構造を形成することができます。このような構造の変化は、非共有結合の再配位により吸熱反応を起こします。示差走査型カロリメトリーはこの吸熱反応を測定します。

DSC の仕組み

DSCのサーマルコアはリファレンスセルとサンプルセルの、2つのセルで構成されています。 

この装置はこの2つのセルの温度を上昇させる際、これらのセルが同じ温度で維持されるように設計されています。

測定を実行する

DSC測定を行うには、まずリファレンスセルに緩衝液を、サンプルセルにはサンプル溶液を充填します。充填後、一定の速度で温度を上昇させます。 

タンパク質がアンフォールドしたときに生じる吸熱反応により、セル間に温度差(ΔT)が生じ、ペルチェユニット全体にわたって温度差が生じます。これにより電圧が設定され、電力に変換され、ΔT (温度差) を 0°C に戻すためにペルチェを制御するために使用されます。あるいは、伝導を通じて細胞を受動的に熱平衡に到達させることもできます。

データの生成と分析

タンパク質がアンフォールディングしたときのエンタルピー変化は、濃度でノーマライズした、DSCのピーク下の面積のことであり、単位は1Mあたりのカロリー(またはジュール)です。 

状況に応じて、熱力学モデルをデータにフィッティングしてギブズ自由エネルギー変化(ΔG)、カロリメトリックエンタルピー変化(ΔHcal)、ファントホッフエンタルピー変化(ΔHvH)、エントロピー変化(ΔS)および熱転移に伴う熱容量の変化(ΔCp)が得られます。

DSC と創薬

示差走査型カロリメトリー分析は、創薬と開発に広く使用されています。主なアプリケーションは以下のとおりです。

  • バイオ医薬品開発における最も安定なタンパク質、または候補薬の特性評価と選定
  • リガンド相互作用の研究
  • 精製および製造条件の迅速な最適化
  • 液体製剤の最適条件の容易かつ迅速な特定法
  • スクリーニングに使用するターゲットタンパク質の迅速な安定性試験
MicroCal PEAQ-DSC Automated

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A fully automated, gold standard stability assay platform for the biotherapeutic industry

MicroCal PEAQ-DSC

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The gold standard for structural stability analysis of biotherapeutics, biological macromolecules and polymers in solution.

測定タイプ
ラベルフリー解析
タンパク質安定性
技術
示差走査型カロリメトリー(DSC)
サンプル処理 x per 24h day - 50per 24h day x per 8h day - 6per 8h day
測定温度範囲 2°C - 130°C 2°C - 130°C