ゼータサイザーナノの後継機―あらゆる用途に対応するDLSゼータサイザーアドバンス. 詳細はこちら

詳細はこちら

DLS - 動的光散乱法

ナノ粒子を実用的に計測できる、最も良く知られ、実績のある分析手法

動的光散乱法(Dynamic Light Scattering: DLS)は、溶液中のナノメートル(1×10-9m)オーダの微粒子を計測する、最も実用的、かつ、ISOにも記載(ISO 22412:2017)された簡便な手法として知られています。その原理は、溶液中におけるナノ粒子の「運動速度」を計測し、そのデータから各種の数値計算を利用して「大きさ=径」に換算することに基づきます。

このページでは、DLSの原理やDLSを用いた測定事例、DLS分析装置をご紹介します。

動的光散乱、ゼータ電位測定装置、分子量測定装置のゼータサイザーシリーズ dls_スラリー系の分散安定性評価(dls) dls_コロイド系のゼータ電位(dls) dls_抗体、バイオ系の安定性評価(dls)

dls_インク粒子の凝集体評価(dls) ゼータサイザーのアフターサービス案内

DLS技術の概要

溶液中に微粒子(1μm以下)を懸濁(分散)させると、浮力と重力がつりあった状態であれば、粒子は沈降せずに自由に浮遊します。このときの浮遊状態は、溶液分子との各種の相互作用によって、液中微粒子特有の「ブラウン運動」と呼ばれるランダムな運動を始めます。この運動は、小さな粒子ほど速く、大きな粒子ほど遅くなることが知られています。

では、この粒子の速度をどのように計測するのか、考えてみましょう。この際に重要なキーワードは「レーザ」です。溶液中に懸濁している微粒子に良く位相のそろったレーザ光を照射すると、このブラウン運動の影響で粒子からの散乱光の信号は「揺らぎ(時間変動)≒光のちらつき」を持ちます。この揺らぎの間隔とブラウン運動の速度には相関性があります。

つまり、

  • 小さい粒子 → 速い間隔で「揺らぐ」
  • 大きな粒子 → 遅い間隔で「揺らぐ」

という関係性です(図1.)。

粒子径と散乱強度の揺らぎの相関
図1.粒子径と散乱強度の揺らぎの相関


ここで重要なのは、微弱な散乱光の「揺らぎ」を精度高く計測するためには、環境ノイズや振動などにも注意するほか、高精度な電子回路の設計と、レーザ光の位相・出力ができるだけ安定している必要があることです。とくにレーザに関しては、一般的に、半導体レーザよりもガスレーザのほうが発振する位相・出力ともに安定しているので、DLS測定に向いています。マルバーン・パナリティカルで、DLS装置にガスレーザを採用しているのはこのためです。

さて、精度高く散乱光揺らぎを計測すれば、あとは解析となります。ここで用いるのは、「液中分散したナノ粒子の大きさを見積もる場合、「拡散係数」と呼ばれる物理パラメータを用いると、粒子の大きさはその拡散係数に依存して計算できる」としたアインシュタイン・ストークス理論です。この拡散係数を見積もるために、散乱光信号の「揺らぎ」を「自己相関関数(Auto Correlation Function)」に変換します。この関数を用いて拡散係数を得ることで、平均粒子径や多分散指数を求める方法を光子相関法(Photon Correlation Spectroscopy:PCS)と呼びます。

粒子径と自己相関関数の関係性
図2.粒子径と自己相関関数の関係性


ブラウン運動から粒子径を求めるゼータサイザーに新モデル登場


この自己相関関数プロファイルの意味を少し考えてみます(図3.)。自己相関関数が1の状態(Correlation 1)では、粒子はまだ動いていないので散乱強度に変化はありません。そこから時間が経過すると、粒子はランダムなブラウン運動を開始するので、一定時間が経過すると、「1」から「0」の状態に変化します。「1」から「0」になるということは、最初の位置から粒子がいなくなるので、散乱強度が減衰します。

粒子径が小さい場合、速いブラウン運動をしているので、1から0になるまでの時間が短くなるため、散乱光減衰の開始時間も早くなります。このため、自己相関関数が0に収束する時間が早くなります(図3.青線)。それに対して大きな粒子は、ブラウン運動が遅いために1から0になるまでに時間を要すため、自己相関関数の0に収束する時間が遅くなります(図3.赤線)。これらの挙動を表現するパラメータが拡散係数ということになり、自己相関関数プロファイルを解析することで、拡散係数を見積もることができます。

小粒子と大粒子の自己相関関数
図3.小粒子と大粒子の自己相関関数


自己相関関数に対して、各種数値計算(フィッティング)をすることで拡散係数を求め、粘度等のパラメータを考慮して、各種の「粒子径」を解析します。具体的には、「キュムラント解析」を実施すると、キュムラント径や多分散指数(分布の度合い)が求まりますし、「NNLS法(非負最小二乗法)」などの解析を実施すると、粒子径分布が得られます(下図4.)。これらの計算法は複数あり、どの方式で解かれたかを理解することで、より多角的に解析を行うことができます。

光子相関法の解析の流れ
図4.光子相関法の解析の流れ

マルバーン・パナリティカルのDLS製品

マルバーン・パナリティカルのDLS製品として、ゼータサイザーシリーズがあります。マルバーン・パナリティカルの動的光散乱法には、以下の利点があります。

  • 1~2分で正確で信頼でき、再現可能な粒子径分析
  • 自然環境中での材料測定
  • 平均サイズの取得に必要なのは、液体の粘度に関する知識のみ
  • シンプル、簡単な試料準備、高濃度のサンプルも直接測定可能
  • 簡単なセットアップで完全自動化測定
  • 測定可能サイズ範囲 < 1nm
  • 測定可能分子量 < 1000Da
  • 小容量要件(わずか2µL)
  • 標準規格準拠: ISO 22412:2017, 21 CFR Part 11

製品について詳しくは、以下のページからご覧ください。

ゼータサイザーアドバンスシリーズ

ゼータサイザーアドバンスシリーズ

あらゆる用途に対応する光散乱装置

技術
動的光散乱法(DLS)
電気泳動光散乱
静的光散乱
測定タイプ
粒子径
ゼータ電位
分子量
測定範囲 0.3nm - 15µm